昔、町の一番東を流れている東江川を、人々は『大江』といい大きな江川でした。川沿いにはヨシやアシがいっぱいしげり、日暮れ時は怖い道筋でした。大江の川筋の五反郷新田の村はずれ三昧がありました。福束輪中の上の村と下の村をむすぶ大事な道でした。このようなところには、当然キツネやイタチ、野ウサギが住みつきました。
ある年の田植えも終わった農休みの日のことでした。
下新田におりゅうという若いお嫁さんがおられました。お嫁にきて、初めての農休みにご主人の許しをもらい、大喜びで在所にでかけ、母親のこしらえたお土産を袋にどっさり詰め込んで家路を急ぎました。
帰り道、さいわい大薮まで連れがあったので、世間話をしながら、中村川の渡し船で十連坊にでて、楽しくきましたが、大薮からはおりゅう一人になりました。西の川にでて、大江のよげた道を下り、五反郷新田のおはぐろ三昧にさしかかると心なしか寂しさがつのってきました。
おはぐろ三昧を過ぎて、一つ目の橋を渡り大曲にきました。やれやれ、主人の待っている家も間近と思ったそのときです。なにやらわいわいという音が聞こえてきました。コロンコロンという下駄の音もいっしょです。後ろを振り向くと、小田原ちょうちんを下げたキツネや花嫁衣装で着飾ったキツネの姿が、うす暗やみのよげた道に立っているのが、はっきり見えました。
びっくり仰天。一目散に走り続け家の中にかけこんだそうです。
この話を聞いた村の人達は、こんなうわさをしました。
「おりゅうさんは、キツネの嫁入り見られたで、長生きされるわ」。
そして本当におりゅうさんは、80余年まで長生きされたそうです。
場所 | 輪之内町五反郷新田 |
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連絡先 |
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所有者 | |
製作年代 |
撮影日 | 2011年9月30日 | 経度 | 35.28034456622405 |
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調査年月日 | 緯度 | 136.64241313934326 |
水郷地帯の岐阜県輪之内町。
輪中に位置するこの町は、昔から
川の氾濫をくり返し、生命、家屋、農地等を奪いつつも、水害から身を守るため
様々な治水事業を行ってきました。
中でも宝暦年間に行われた治水事業は、輪之内町のの歴史上大変重要であり、今の輪之内を形づくっています。
輪之内町内には薩摩藩の功績をたたえた史跡や、水と戦ってきた数々の知恵が今も生きています。